2010年4月27日火曜日

業務事例9:景観調査石積調査

文化庁のモデル事業に関する調査(東京都日の出町)

地域における景観に関する調査として、石積調査をおこなった。景観要素としての石積は東京都西部山地部周辺でよく散見され、地域の特徴的な景観となっている。詳細については、業務上述べることが出来ない(日の出町で公開、発表されているので興味のある方は問い合わせいただきたい)が、調査中に私の興味の範囲でスナップした写真等を以下に掲載する。





日の出町では平井川河川敷で採取された玉石の石積が多くみられた。古い石積の残されているところは地域の景観を良く保っている。逆に練り石積、検地石積、コンクリートよう壁化してしまったところでは、地域性の喪失が顕著となっている。

2010年4月21日水曜日

エリンギ

エリンギ
[2005年06月03日(金)記述]


最近出回っているエリンギというキノコ。
なかなか、歯ごたえもあって、味もあり美味しい。もとはイタリアのキノコという。

エリンギ / 田賀陽介筆


イタリアのキノコの多くは北イタリアが中心だそうだが、エリンギはイタリアの南部で自生するキノコだそうである。もちろん日本で市販されているものは自生ものではなくて栽培ものであるが、もともと野生のものはプーリアとかバジリカータとかの南部の山々一体に若葉がふきはじめる春先木立の足下、枯葉の合間からニョキニョキと生えてくるものらしい。

向こうではカルダレッロとかカルドンチェッロとよばれる。イタリア料理人の田中氏に聞いたら、カルドと呼ばれるキク科アザミ属の植物があって、そのカルドが枯れたあとに出回るキノコということでカルドンチェッロという名前がついているらしい。エリンギは学名。

最近はどうか知らないが、ヨーロッパでは日本ほどキノコを食べなかったそうだ。その中でイタリアだけはローマ時代から食されていたらしい。このエリンギも古代ローマから食されていた伝統の食材ということだ。

ちなみにカルドはその茎を食べる。野生のアザミを品種改良したもので茎の部分はちょっとセロリに似ている。アザミといえばゴボウである。そう、ゴボウは日本で食べるアザミ属の代表的植物である。野生のものはモリアザミ(牛蒡薊)、ハマアザミなど根を食用にする。ノアザミなどは根を乾燥させて神経痛や利尿の民間薬にしたり、若い根生葉は煮て水にさらし和え物、浸し物にする。日本でもなじみの深い植物種である。山に入るとヤマゴボウと呼ばれる植物があるがこちらは毒なので間違わないように、我々が普段食卓で口にしているのは「ゴボウ」とよばれるアザミなのである。

話は、エリンギにもどり、日本ではいくつかに刻んでバター炒めなどにするのが一般的なような気もするが、やはりイタリア南部原産のエリンギ茸はぜひとも、まるのままもしくは大きいものは半割にして、オリーブオイル、パン粉、ニンニク、パセリを混ぜたものを、エリンギ茸にかけてオーブン焼きして、塩、胡椒で食べてみたい。

南部イタリアではバターをほとんど使わないから、現地に近い食べ方といえる。現地に行って食べるのが一番いいが、たまに原産地の食べ方で味わってみるのもいいと思う。(文責:田賀陽介)

業務事例8:国産材家具の試験的検討

国産材家具の試験的検討(徳島県美馬市)
[2006年04月09日(日)記述]

間伐材を含め、余剰ぎみ、あるいは一斉造林による単離的な森林環境を有効に活用していく可能性を探ろうと、月並みではあるが針葉樹の家具を検討し、道の駅店舗に設置した。

表面が柔らかさを直に触れることで針葉樹としての価値が
ある。堅木では得られない質感に着目してデザインした

セパレートタイプ

ソファータイプ


部材同士にはっきりと勝ち負けを決めて組み合わせ、接着面を大きくして強度を持たせている。部材は剛性を増すために太いというよりも、軟材であるために必ずつくであろう傷を想定しかぶり厚をとっていると同時に日本家屋の柱梁に感じる優しい質感を家具に与えている。

業務事例7:観光サイン計画

脇町伝統的建造物群保存地区周辺観光サイン計画(徳島県美馬市脇町)
[2006年04月09日(日)]

地域の由来を知ってもらう標示をサインとして計画。サイン板面の存在感を排除した形態とし、説明と景観との調和を図った。

後日、ロシアの現代アート作家、イリヤ・カバコフがこのサインと似たようなアートを新潟でやっている事を知った。ただし、全くコンセプトが違うので、私としては似て非なるものだと思っている(多分、あちらもそう思っていると思うが...)。






業務事例6:県道バイパス道路歩道および植栽計画

県道バイパス道路歩道および植栽計画(徳島県美馬市脇町)
[2006年04月08日(土)]

県道バイパス整備、周囲の環境を考慮した植栽および歩道の計画。
当初計画は歩道と道路のレベルが同一であったが、歩道のレベルを少し高くして、歩行者の車に対する危機感を緩和する計画とした。歩道レベルをあげることは、歩行者の保護と同時に車からの歩行者の視認性も高くなりより安全な設計と言える。これに絡めて、より合理的かつ景観的に無駄のない路面の排水計画を立てたが、インフラ整備が進んでおりこれは実現しなかった。植栽に関しては、ヤブラン等の常緑とそのたのカバープランツの混植と地域の山野草、地域の山林の樹木を植栽して、多様な植栽として計画。地域自然の保全的な植栽とは言いがたいが、場所的に考えて、地域の植物と同種のものに親しむことを意識し、外来種はなるべく避けて計画した。

全景、植栽幅が狭かったので高木の成木はあまり植えず、灌木と草本を主にした植栽計画となっている

斜面植栽なので地被類の植栽でも景観的には緑の多さを感じる
マウントアップされたことによる視覚的効果でもある
ところどころに河原石を配しつる性植物なども織りまぜ変化を付けている

ヤブランをはじめ、ワレモコウなどの山野草を混植し、カバープランツは自然淘汰に任せている
経年セイタカアワダチソウ、ヨウシャヤマゴボウなど招かざる外来雑草の侵入も多少みられたが、おおむね良好と言える

チドメグサが歩道と植栽帯との関係を馴染ませている

ケクロモジ

クロモジの生育環境について
[2005年12月05日(月)記述]

【1.クロモジの枝葉の様子】

四国でみつけたクロモジはクスノキ科クロモジ属の亜種、ケクロモジのようです。

本州などに普通に出現するクロモジの葉より一回り以上大きいようで、成木の葉身は12cmから15cm以上あります。そして葉先が少し細長くのびています。クロモジは無毛ですが、ケクロモジの葉の表と裏に毛が密生しています。成長の過程で毛の密生度が変わってきますのでどのぐらいの密生度か、ということは一概にはいえません。また枝先に3枚から5枚程度の葉をつける様子はクロモジと変わりがありませんし、発色の良い深い緑色の枝に黒い細長い斑点縦に連なって模様になっているのもクロモジと同様です。

ケクロモジ 徳島県市場町2005年11月13日撮影



【2. ケクロモジの枝ぶりの様子】

ケクロモジの枝は地面が平らであれば、四方に枝を伸ばし横に広がるように成長しています。葉は互性につき鮮やかな緑色が目立っています。阿讃のケクロモジの立地は傾斜が急なので下り方向に向かって放物線状に枝がのびています。



立地に寄って同じ種類の樹木でも枝ぶりの様子は違ってきます。少し分かりにくいですが、写真の株立ちして枝先の方に黄緑色の葉っぱがついてるのがケクロモジです。斜面の下の方に向かってしなるように枝が伸びています。どんな植物でもそうですが、植物のもつ枝付きの特徴以上に光の方向や量と重力によってその木の立ち姿は変化します。



【3. ケクロモジの樹形の比較】

同様の阿讃山脈のケクロモジでも大滝山(海抜945m)のヒノキ林の林内に生えているケクロモジの樹形は異なっています。この付近は香川県の自然公園と大滝山西照神社の社叢林
(しゃそうりん)となっているので植物採取はできません。このヒノキ林は間伐されて、下枝も打ち払われているので、明るい林内になっています。



林内には、かなりの密度でケクロモジが群生しています。標高が高いためか背丈はあまり伸びないようです。前出の雑木林と比べて傾斜が緩いために主軸がまっすぐのびて枝が四方に広がっています。簡単にスケッチをして比較してみました。左が傾斜の急な雑木林のケクロモジ、右が傾斜の緩いヒノキ林のケクロモジです。



環境によってずいぶんと樹形がかわっていることがわかります。ただし、ケクロモジの枝振りは両方とも概して直線的な印象があります。だから急斜面で多少しなった感じの樹形になっていても粘りのある樹木のしなった感じとは雰囲気が異なります。





【4. ケクロモジの生える林相と微地形的風土】

阿讃山脈でのケクロモジの出現する地理的条件は、山の北側斜面となる明るい林内で、直射日光の当たらない環境です。ある程度の植物遺体と腐葉土が堆積した少し湿り気のある土壌であることも条件といえます。ですので、この条件を満たせば、雑木林でも、生産林でもその林内にクロモジは群落を形成しているようで、「ケクロモジの樹形の比較」で示した大滝山(海抜945m)の山頂部の杉林の林内でも群落を観ることが出来ます。
今回のケクロモジの生育地は海抜300m程度の阿讃山脈の北側斜面山腹で、土地の利用履歴は40年前までは薪炭林として使われていた雑木林です。現在の林相の概観はコナラとホオノキを樹冠とする林(ホオノキ - コナラ林)となっています。大抵の樹木は株立ちしていて、薪炭林としての伐採の経緯がその景観に現れています。




植相の概観は

高木・亜高木層:ホオノキ、コナラ、クヌギ、トネリコ等
低木層:マルバウツギ、シキミ、ヤブニッケイ、ヤブムラサキ、
ツゲ、ヤブツバキ、イヌガヤ、ヒイラギ、ケクロモジ等



【5. コナラ - ホウノキ林に隣接する林相】

隣接する同様の北斜面の放置薪炭林では、林相が異なっている場所もあります。この対象地に隣接する山林の林相は、ケヤキとヤマザクラを樹冠とする林(ケヤキ - ヤブツバキ林)で、植相の概観は、高木・亜高木層:ケヤキ、ヤマザクラ、コナラ、低木層:ヤブツバキ等、でケクロモジは出現していません。この林相違いは、土壌堆積厚の違いといえます。概観しした土壌の状態は対象地であるホウノキ - コナラ林で植物遺体の土壌堆積物が多く、ケヤキ - ヤブツバキ林で土壌堆積物が少なく岩石が露出しているところが多く見られ、土壌厚の違いとその保水性よって林相の違いが現れていると考えられます。


周囲の放置薪炭林をみても、このような二種類の林相がパッチ状にみられます。こうしたパッチ状の山の林相の特徴を形成する理由として、もともと阿讃山脈の地層がもろく、地滑り多発地であるために滑落崖が山のところどころに形成され、その滑落崖下方に土壌の堆積が起こり、そこにホオノキ - コナラ林が形成されるために(※1: 滑落崖の形成と林相の関係)、点在する崩落状況がパッチ状の林相として現れていると考えれらます。
地形的林相であるホオノキ - コナラ林は直射日光のあたらない明るい林内であるために、低木のケクロモジが出現していますが、いずれ気候的林相に遷移して、アラカシを主体とする常落混交を経てシイ林の極相となると予想されます。そのため、活用目的種であるケクロモジの自然生育環境を維持しながら、ある一定の自然度を保った活用林を形成することを目的とした選択的間伐を試験的に行っていきます。(これを環境保全活用型の景観デザインの手法の一つと考えています。)

※1: 滑落崖の形成と林相の関係
滑落崖の下方に地滑りブロックが出来、その上に植物遺体が堆積し、滑落崖の下方からの地下水の浸出し、堆積した植物遺体を豊富に含んだ土壌を湿潤にするため、陰樹よりも水気を好む陽樹の林相、つまり気候的林相よりも地形的林相を形成する。(参考:「山の自然学」小泉武栄著・岩波新書p38)

業務事例5:山林保全と経済化の試み

ロトルプロジェクト・地域土地利用と保全の試み
[2006年04月08日(土)記述]

ロトル・プロジェクト
単なる空間デザインではない。地域の環境および経済循環に関する試みとして、本計画は企画実行されている。足下のおぼつかない部分もあるが、少しずつ良好な環境創出および保全と経済化が、図れればと考えている。

本計画は、日本の森林の約41%(※注1)が針葉樹等の生産緑地(人工林)として、しかもほとんど一斉林となってしまったことによる環境悪化を、これまでの山林の土地利用のあり方も考慮しつつ、これからの山林土地の多面的な利用の一つとして実験的に施策するものである。

50年来の放棄薪炭林と隣接する針葉樹生産林に設けられた椎茸生産ホダ場とを連関させながら、放っておけばアラカシ林ないしシイ林に遷移する林を、薪炭林に出現する植物(クロモジ)を保全し経済活用することで、間伐による薪炭林の多様性の維持をはかることを目的としている。また、選択的間伐によって残されたコナラ、クヌギは椎茸生産のホダ木として活用し、より複合的な土地利用の検討を図るものである。

クロモジは地元本家松浦酒造場にてクロモジ酒として、生産される。
本計画は全体の企画からボトルデザインまで一貫したデザインである。
(→クロモジ酒デザインの関連記事)
また、旧薪炭林は体験型活用林として整備する試みも含み検討している。
現在進行形のプロジェクトである。

四国阿讃山脈中山間部の風景


杉林内の椎茸のホダ場


阿讃山脈の東、鳴門の本家松浦酒造場


薪炭林の選択的間伐とクロモジ生育地の創出


クロモジ酒・ロトルのボトルデザイン
ロトルは四国の風土由来の自然育成のクロモジのベルモット・リキュールとして開発




五年の歳月をかけて企画計画してきたリキュールのお披露目を2005年10月4日から9日の期間お茶の水・美篶堂ギャラリーにて展示販売することとなった。


原料となるケクロモジの木をギャラリーの軒先において原料木を展示したかったが、四国のクロモジの木をもってくることができなかった。そこで同種のクロモジの鉢植えを「あおき苑」の青木茂氏と兵藤氏に調達してもらった。





展示室内は井上インダストリィズ(家具)、ユービーコム(照明)の協力によった。ギャラリーは立ち飲みのカフェバーのように設え来客に試飲してもらった。


これからの地域あるいは暮らしは水系単位での土地利用と水を中心とした物質循環のあり方をもとに、経済、暮らし、自然の持続的関係性を考えるデザインが必要であるという思いを強くしている。それが、仮に完璧なものでないとしても、ビジョンと方向性ができたのではないかと思う。




※注1: 「徳島すぎを知っていますか?」徳島県木材協同組合連合会・徳島県木材需要促進協議会編の資料による。それによると徳島の人工林は63%と全国と比べ非常に高い割合を占めている。

ちなみに「環境を守る最新知識」日本生態系協会編の記述によると国土の70%が森林と記されている。全国森林面積の人工林が41%、天然林が53%ということなので、国土面積全体の37%ぐらいが天然林ということになる。

この割合が多い少ないの判断は、国土における森林機能の多面性に社会的経済的環境的評価を時間軸をふまえて、どう与えるかであって、心象的な4割弱あればまあいいとか、少ないとか、の判断をすべきではない。ただし、自然林は人間の力ではつれないし、自然であることが積極的に人間に害を及ぼさないとすると、天然林が多い分には是とするのが妥当だといえるだろう。

業務事例4:大洗磯前神社付属海洋博物館展示計画

大洗磯前神社展示計画(茨城県大洗町)
[2006年04月07日(金)記述]

茨城県大洗町は太平洋に眺望をのぞむ町である。大洗磯前神社は周囲に松林を従え落ち着きのあるたたずまいと格式をたもっている。高度成長期より寄進された海に関する展示品の収蔵施設としてたてられたが、老朽化により建築展示ともにリニューアルされた。

神社より太平洋をのぞむ



大洗磯前神社本殿門



改修された大洗磯前神社海洋博物館
設計はアルキスト(豊田利明氏)



海洋の単細胞動物からほ乳類までその形態がわかる展示として計画
















業務事例3:吉田家住宅活用計画

吉田家住宅活用計画(徳島県美馬市脇町)
[2006年04月07日(金)記述]

文化庁指定文化財・伝統的建造物群保存地区である徳島県脇町南町の藍商人の家屋の保存と活用計画の一環としての展示計画。
施設名:吉田家住宅  規模:家屋床面積約1000平方メートル


伝統的建造物群保存地区・南町通り沿い吉田家のみせ構え


吉田家住宅味噌蔵跡周辺
正面は吉田家主屋、右側は質蔵と中蔵
(※ 外構計画は背景計画)


南町通りより入ったミセ


ミセ土間とオブジェ



ミセ土間
奥に見えるのはもとの梁







台所(釜屋)付近







展示解説器具
往時は釣り下げの照明はなかったので
室内の明るさを控え行灯にちかいよう
な光源で解説標示をデザインしている






質蔵展示
フレームレスのガラス間仕切りと当
時の板壁をそのまま使って質蔵自体
の空間性を利用した展示としている


質蔵二階部分
蔵本来の暗さをいかし映像により藍商
を支えた山間部地域の紹介をしている



業務事例2:城の谷橋(徳島県美馬市)

徳島県橋梁デザイン・城の谷橋
[2006年04月07日(金)記述]

徳島県県道バイパス・城の谷橋 全長約16m
小さな橋梁のデザイン、大きな橋梁のデザインも景観として重要であるが、小さな橋梁は生活にもっとも身近なシークエンスであったりする。無造作に交通上の便を計るだけでなく、生活空間の一部として意識した計画と景観上の配慮をして、デコラティブなデザインを排除してシンプルなデザインを検討した。


城の谷橋全景



周辺環境にインパクトを与えないシンプルなデザインとして計画
古い民家と石積が欄干から見える



歩道床部分に地元間伐材を使用し橋としての存在感と
人に優しい質感を計画した