太平洋戦争、戦前の時代から実際の経済性や社会性から乖離して、軍部官僚をはじめとして多くの国民が先導され、これに疑義のある者は他の国民からも「非国民」といわれ、戦争へと突き進んだという。そんなのは過去の時代の過ちで、今の時代はもう少しはマシな社会になっていると思いたかったが、どうもそれは違ったようだ。
そして、自分の周囲の知人達のうちでも、日頃リテラシーを持っていると自認しているふうな人達の多くは、全くマスコミ情報以上の事実確認の努力をしないまま、原発の事故状況を受入れている。彼らに問えば、多分「事実認識はある。ただじたばたしても仕方がない。状況を受入れて、普段通り過ごすだけだ。」とでも言い、ちょっとした運命論者になってくれるだろう。そういう人達は仮にこの世が終わっても多分気が付くことのない鈍感な人生観の中に佇むしかない。彼らは多分自分たちのことを繊細だと思っているに違いない。申し訳ないがそう皮肉りたくなる。
発災後、一端飛騨へ東京から退いたとき、ある知人から電話で「東京はいたって普通に動いているよ。」と私のことを理解しようとするよりも、むしろ諌めるような言い方をされたことに私は実にがっかりさせられた。既に、私は被災地、被災者に対して実体的行動を起こしていたし、諌められるような言われはないと思ったが、どんなに親しい人だったとしても、社会と比較して目の前の人を評価する人は、そういった時にはもうこちらを色眼鏡でしか見ていないし、逆に私自身も相手を「生身の人間を信じられない人」ではないか?と疑心暗鬼になってしまうのである。
しかし、逆に直感的に何か出来ないか?と問いかけてくる人達もまずまずいるものである。良かった。事故後、私は一端東京から飛騨へ退き、すぐさま飛騨で廣瀬氏と被災者支援プログラムの作成と、実際の被災地現場での活動を現在実行しはじめている。
もし私のこんな実感に理解してくれる人がいたならば、是非とも、少なくとも自分が普段から信じたいと思っている相手がいるのなら、茫洋とした社会の色眼鏡を通さずに、その相手(人)の、今、実感している深層の心情を理解するように努めて欲しいとおもう。
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さて、多くのマスコミでは「デマを信じないで」等と言った広告が飛び交っているが、マスコミは「安心」を求めているのに「安全」という。「本当に安全?」と聞くと「ちょっと危険かもしれない」という。「どういうことが危険なの?」と聞くと「ただちに危険はない」という。そして「じゃあ、今は安心なんだね?」と聞くと「今は安全だ」という。こうしたループが延々と続いている。全く誠実なものの言い方ではないと思う。だから主要なマスコミは信用してはいけないと思う。多様なメディアが存在するこの時代、ビジョンがない、またはビジョンに一貫性のないメディアは、デマや、ごまかしや、まやかしに染まりやすい。その点で善くも悪くも「テレビの主要マスメディア-マスコミ」と「2チャンネル」とは同じようなものである。
しかし、原子力発電所事故に関して、このような社会の重大な局面を迎え、マスコミが、増々、経産省(保安院を含む)、東電の迷走を覆い隠す機能を果たし、今後の適切な損害賠償、補償責任を曖昧にする不適切な報道が流されているのは問題であるとおもう(まぁ、普段は民放にとっては東電はクライアントだから仕方がないと言えば、仕方がない)。出てくるのは原発推進者達ばかりであるのだから、事態の様子を過小評価するのは当然である。しかし彼らは専門家であると同時に、ある意味賠償責任に関わる人達であるのだから、じつにマスコミとは思慮が無く(クライアントには思慮があるのかな)、真の報道をおこなっていないように思える。まぁ、「2チャンネル」だと思えば、苦言を述べることもできないし、シャレだと思って流すしかないのだが....。
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それにしても、過去にさかのぼった原発の事故をはじめ、電力会社や保安院、原子力委員会、原子力安全委員会の対応のいい加減さは様々なところで語られているが、今回の事故を経験して、なにやら謝罪したらしいが、これまでの委員会の内容を知ると、本来は謝罪だけでは済まないし、これから真相をもう一度問いただしていかなければならない。報道で語られた謝罪の内容からすると、元原子力安全委員会の専門家は当事者意識が欠けていて、その点の反省がないように思う。
しかしながら、こうした原子力関係者の重責とは別に、我々国民にもこれまでの原子力開発を容認し、安全確保に愚鈍できた責任も免れないだろう。そのことを、我々も当事者意識を持って受け止めていかなければならない。
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とは言っていても、マスメディアや既成秩序に頼りたい人や集団が、社会のために状況を自ら改善するといった理想的な展開は、多分望めないだろう、そこで、多少なりともここでは、気が付こうとする人々に対して、まともな情報を伝えることができたらと考え、以下に私が有効だと思えた情報を掲載することにした。
特に今現在(平成23年4月7日)時点で、福島第一原発事故における対処的措置はとられているものの、政府、官庁を通じて全くビジョンが示されていない。このため、原発事故に関わる避難者にとっても、今後の社会経済を考えれば多くの国民にとっても、原発事故収拾の先見、見通しの判断材料が足りていない。これに答えるひとつの見解が、日本記者クラブ主催の会見で環境エネルギー政策研究所・飯田哲也氏によって提言されている。
これはyoutube動画として日本記者クラブから公表されているが、これを全てテキスト化して多くの人に今後の判断材料にしてもらえるものとし、以下に添付するので参照頂きたい。
そのなかで、特に原子炉の現状の実質的な復旧の時間スケールを再確認頂ければと思う。
また、現時点で未だ柏崎刈羽では新規の原発事業を進めている。従って、この期に及んでも規制秩序の問題点が是正されることの無いまま、社会衰退の一途をたどることになるかもしれない。しかしそれでも尚、今後の日本社会の枠組と方向性を一人一人が、また一人でも多く見いだす勇気をもって頂くことを懇願したい。
以下、「3.11大震災/福島第一原発/二度と悲劇を繰り返さないために」
(尚、当日行われた記者会見で配布された資料は環境エネルギー政策研究所のHPに掲載されているのでそこから資料を取得してください。資料1「
「3.11後のエネルギー戦略ペーパー」No.1」、資料2「
「3.11後のエネルギー戦略ペーパー」No.2」PDF)
「3.11大震災/福島第一原発/二度と悲劇を繰り返さないための6つの戦略」