2010年6月18日金曜日

須川におもう.........。

瀬君に呼ばれて、彼が教えている山形の学生の課題の様子を検分させてもらった。夕方東京へ帰る電車の時刻まで少し間があったので、廣瀬君が紹介してくれた山形市内を流れる須川の常磐橋付近の河畔に赴いた。正確には、彼が段取りをしてくれてその川を見聞する事ができたのだが、事の次第はともかく、普通に観れば町中の平野部に流れる普通の川を紹介されたのであった。
普通の川だが、山形周辺ではとても彼が好きな景色だという。そうした須川の感想以外にも、幾つかの説明をメールで受けていたが(失礼な話だが)いい加減に読み流して現地へ赴いた。そして、川のほとりを少し歩き、まず最初にシャッターを切った写真が下の写真である。


東京に戻って、彼からもらったメールを読み直してみると、
「河床勾配が緩く堤内の宅地地盤との高低差も僅かで、付近の住民がニセアカシアを適当に伐り(残し)、草を刈り、また増水時に出た礫を低水護岸に一部用いているなど、人間が自然に対して控えめに手を入れた感じが..............。」
と書かれている。
なるほど、現地に立ち説明を意識せずに、よい眺めは何処だろうと撮影した1枚目の写真が廣瀬君が語っている景色を端的にあらわしている。ただ奇麗な川というのではなく、やはり町を流れる川なのだから、人の生活との関わりがある川の景色が、とてもそこの生活や風土性を感じさせてくれて、シャッターを切りたくさせたのであろう。

川の水面の向こうにみえる住宅、当然それらの家々からも川の水面がよく見えることだろう。これがぶっきらぼうに配慮なく河川整備されていたとしたら、重厚な堤防に隠れて、川と周囲の生活は確実に切り離されていただろう。現代生活の中ではさほど不便さなどは感じないかもしれない。川面が堤防で見えなくなってしまっていたならば、生活と関わりのある川にはあまり思えず、堤防の上に立った時に多少の開放感を与えてくれる程度の表層的で一時的な景観にすぎないものになってしまっていただろう。しかし、今、この配慮された川面の見える川の護岸は周囲の生活者にとってずいぶんと生活の豊かさを提供してくれているはずであり、地域の誰にとっても、かけがえの無い地域への深い絆を想起する景観となっていく。

「増水時に出た礫を低水護岸に一部用いて....云々」というのは、コンクリート護岸でガチガチに固めずに下の写真のように敷設して、謙虚な施工例の好例であることを述べている。
確かに、仮にこれがコンクリートで固められていたならば、景色どころか堤防で見えない方が良いぐらいなものだったかもしれず、川原へ降りてみようとは思わなかっただろう(そうだとすると、川に背を向けて暮らすことを是としてしまえば、川をコンクリートで固めて堤を高くするのは、逆に理にかなっているということになる。今の都市生活では水路や小河川を安直に暗渠化してしまうことからも明らかなように、水辺に背を向けることがトレンドなのかもしれない。同時に私の事務所の近所のカフェは飯田橋堀を前に水辺のカフェをやって大いに繁盛しているのだが......。)
とりとめもない普通の景色のようだが、これは周辺の住民の生活に配慮できたすばらし土木事業の一つでなのである。河川敷には在来種ではなく、上流どこかでおこなわれた法面緑化によるニセアカシアの逸出によって河畔林が形成されている。ニセアカシアというところが多少悔やまれるところだが、廣瀬君の説明にあるように、これも全く伐採してしまうということではなく状況に応じた施策としてその柔軟さを非常に評価することができる。
前提として、河川幅が十分にとれているということがこうした低い堤防や護岸の計画に自由度を与え、施策を可能にしている訳だが、もっと都市化した行政区では、これは特殊なものでしかないし、現実的には難しい施策だと考えるかもしれない。しかしながら、土地条件や土地利用の特性をもっと配慮して氾濫原のあり方を見直し、徐々にある一定の氾濫原エリアでの資本集中と固定を撤退させるということも危機管理と地域の安定経済の骨格となる土地利用構造の形成でもあるはずである。地域資本の安定化という事を根本から考えていくべきではないだろうか(それは国ではなく地域自身が自らのためにやらなければならない。所得税が一旦国のがま口に入ってしまう、といった金(財源)を運用する権利との乖離があったとしても、自分たちが獲得すべき思考を捨ててはならない、と思う。)



そして、我々は何よりも人間の生きる知恵の働いた自然と調和した美しい景観、精神と肉体の健全性を育む環境を生活の中に獲得出来ることになるのである。調和的な環境は、コンクリートで固めることや土地の高度利用と称して建築物を高層化することではないことは誰もが感じているはずだろう。(文責:田賀/2009年8月24日執筆、2010年6月18日加筆修正)