2010年4月20日火曜日

業務事例1:吉田家住宅みせのま改修

吉田家住宅の土間に置かれたもの(徳島県美馬市脇町)
[2004年01月30日(金)記述]

徳島県美馬郡脇町.....うだつの町並みとして、文化庁から保存指定を受けている。この吉田家住宅はその町の中でもっとも大きな藍商人の家屋だ。盛んだった頃は、みせの間には藍玉が並び、客や使用人たちの往来で賑やかだっただろう。

僕はこの建物の活用計画の中で、ガランとした状態よりも、当時の賑やかさを模したフェイクでみせるよりも、そこに人の姿や生活のなりわいといった当時の人々の魂にかわる何かを置くべきだと考えた。

近付き難いものでなく、しかし、雑多な情に埋もれることのない魂の気高さ。彫刻家・豊田洋次氏の作品である。訪れる人々に体験してもらうこの空間にふさわしい魂を彼は生み出してくれた。少なくともその空間は僕が思い描いていた密度になったようにおもう。




 この「たましい=かたまり」はいま入館料を払わなくても入れる入口の土間に置かれている。町のひとや訪れる人々は、触れることも、座ることも許容してくれた作者の記名なきその楠木の塊をどのように受けとめていてくれるだろうか。

その場所は拝観料をとったり、作品の権威付けをしなかった分だけ、そこをみれば周囲の人や管理する団体の古い町並みに対する心構えや愛情、訪れる人たちへのもてなしの心を推し量り、どんな町か知ることができる。
それは個人の住宅の玄関の構えをみて、ある程度、豪華なだけか、心安いのか、どんな家か知ることが出来るのとおなじである。施設が活用されていくなかで、良い方向に向かっていってもらいたいと願う。(文責:田賀陽介)

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