2010年4月21日水曜日

箱根の夏

箱根の夏
[2009年08月22日(土)記述]を後日修正

仕事の現場のある箱根へ先月末に出掛けた。
計画当初から箱根外輪山内の気候を注視してきたつもりだが、改めてその状況を確かめようと、友人のギスリ・エリンソンと出掛けた。

箱根の夏は雲だまりとなって、ほぼ霧か雲かという日々が多い。特にこの夏は全国的に雨の日が多く、この地域でも局地的な豪雨などがあり、その前後で霧や雲に覆われている日々がつづいたようだ。ただ、他の地域から比べれば、この時期は霧に覆われる事の多い箱根仙石原周辺にとって異常と感じるほどではなかった。当たり前だがこうした気候のため、年間を通じた積算日照時間は少なく稲作や畑作には不向きな地域であるわけで、見渡す限り農地というものがほとんど見当たらない。実際にここ数年間この地域の業務に関わり、私は気候的な状況を実感した。

箱根桃源台からロープウェイに乗って、姥子で降り、仙石原周辺を見渡すロケーションを探してみたが、我々が求める眺望ポイントは見つける事ができなかった。眺望を探している途中、ホテル従業員の若い女性が親切に少しはにかみながら、しかし積極的に良い場所がないか案内をしてくれた。彼女は雨気味の空模様に応じて、来客へ傘を施設周辺に置いてまわっているところだった。



彼女の明るく親切な印象は、普段訪れた時に、入れ食い状態の観光地箱根で感じる気がめいるような接客の不快感とは全く異なるものだった。ひとつの理由は彼女の自分の勤める仕事への小さな、つまり大げさではない、そして、とても純粋な誇りのようなものが感じられたためかもしれない。こういった若者の気持ちを少しでも救い上げるメンタリティが、箱根の地域事業者や地域の年配層といった大人たちにあってくれれば良いのだがと、後からしみじみと思った。

この地域は幸いにして、温泉があり、東海道の要所でもあったため、湯治、観光としての経済的資源と交通の便から現在のような観光名所となっている。首都圏からの距離が近く、交通網も行政や開発業者等によりかなり整備されているために、様々な交通機関を利用して気軽に首都圏からの来訪者が訪れる。不景気、他の観光地域との競合があるといっても、それなりに需要があるために、かなり好条件の観光地域である。他の観光名所から比べれば比較にならないほど贅沢な商圏だと言える。

そのためか、来訪して常に感じるのは地元の観光事業者自身の観光事業への努力が足りないことで、土産物、食事等、費用に見合った満足感を得られるものは現在僕の知るところでは、ほぼ無に等しい。特に外食店舗は高額で、不味いか普通、地のものを食べられることは(土地生産力の弱さも手伝い)ほとんどない。小田原が近いので、山中といっても海の幸等を活かした食への関心が待たれるところである。また、長らくの観光地域のわりにサービス対応(つまり店員などの態度、とくに中高年の店員、従業員)の印象が非常に悪いことが、せっかくの観光気分をかなり滅入らせる。箱根の観光に来訪者が多少の不満をもっても、一見サンの客が次々とやってくるので十分に食っていけるという感覚なのだろう。客よりも自分の都合を優先しているという感覚だ。

観光サービスをやっていない地元人間が外者に入ってきてほしくない、というのとは訳が違う。そんなわけで、無難に気分を害せず観光をしたいのなら、多少従業員教育のなされているであろう大箱の温泉施設やホテル、旅館で過ごし完結した方がマシだという印象は拭えない。

厳しい言い方だが、ここ二年以上箱根に通った印象は、箱根特有の自然環境を享受出来た大きな喜びがあることを鑑みても、私自身にとって人や人のつくり出した環境の不味い印象の量と質が勝るというのが正直な気持ちなのである。ただやはり、温泉の泉質や自然環境は他では味わえないものがあり、まだ出掛けた事がないという人には是非とも一度は出掛けてほしい場所でもあるのである。

ホテルガールの好印象から、結局この地域の批評に転じてしまったのだが、自然環境を活かすことが、この箱根地域には本当に重要であると思うし、土地生産力の低い土地柄では観光経済は特徴でもある。だから、それを通じた人間関係や自然との関係を、ほんとうに未来を担う若者への希望として大人達が背筋を伸ばして、考えてほしいのである。

過去の観光開発とその残骸、そして淡水湖に海洋の水族館や海獣の銅像、海賊船の遊覧船など、地域の環境と全く無関係で文脈のない観光開発の有様は、本来のこの地域の観光資源を基盤にした経済活動という点でマイナス面が大きいと考えられるが、この点については、いつか別の記事で語れたらと思う。

結局姥子周辺では、眺望ポイントを見つけられなかったが、我々は外輪山側へ移動しなんとか撮影を完了した。

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