2010年4月21日水曜日

業務事例5:山林保全と経済化の試み

ロトルプロジェクト・地域土地利用と保全の試み
[2006年04月08日(土)記述]

ロトル・プロジェクト
単なる空間デザインではない。地域の環境および経済循環に関する試みとして、本計画は企画実行されている。足下のおぼつかない部分もあるが、少しずつ良好な環境創出および保全と経済化が、図れればと考えている。

本計画は、日本の森林の約41%(※注1)が針葉樹等の生産緑地(人工林)として、しかもほとんど一斉林となってしまったことによる環境悪化を、これまでの山林の土地利用のあり方も考慮しつつ、これからの山林土地の多面的な利用の一つとして実験的に施策するものである。

50年来の放棄薪炭林と隣接する針葉樹生産林に設けられた椎茸生産ホダ場とを連関させながら、放っておけばアラカシ林ないしシイ林に遷移する林を、薪炭林に出現する植物(クロモジ)を保全し経済活用することで、間伐による薪炭林の多様性の維持をはかることを目的としている。また、選択的間伐によって残されたコナラ、クヌギは椎茸生産のホダ木として活用し、より複合的な土地利用の検討を図るものである。

クロモジは地元本家松浦酒造場にてクロモジ酒として、生産される。
本計画は全体の企画からボトルデザインまで一貫したデザインである。
(→クロモジ酒デザインの関連記事)
また、旧薪炭林は体験型活用林として整備する試みも含み検討している。
現在進行形のプロジェクトである。

四国阿讃山脈中山間部の風景


杉林内の椎茸のホダ場


阿讃山脈の東、鳴門の本家松浦酒造場


薪炭林の選択的間伐とクロモジ生育地の創出


クロモジ酒・ロトルのボトルデザイン
ロトルは四国の風土由来の自然育成のクロモジのベルモット・リキュールとして開発




五年の歳月をかけて企画計画してきたリキュールのお披露目を2005年10月4日から9日の期間お茶の水・美篶堂ギャラリーにて展示販売することとなった。


原料となるケクロモジの木をギャラリーの軒先において原料木を展示したかったが、四国のクロモジの木をもってくることができなかった。そこで同種のクロモジの鉢植えを「あおき苑」の青木茂氏と兵藤氏に調達してもらった。





展示室内は井上インダストリィズ(家具)、ユービーコム(照明)の協力によった。ギャラリーは立ち飲みのカフェバーのように設え来客に試飲してもらった。


これからの地域あるいは暮らしは水系単位での土地利用と水を中心とした物質循環のあり方をもとに、経済、暮らし、自然の持続的関係性を考えるデザインが必要であるという思いを強くしている。それが、仮に完璧なものでないとしても、ビジョンと方向性ができたのではないかと思う。




※注1: 「徳島すぎを知っていますか?」徳島県木材協同組合連合会・徳島県木材需要促進協議会編の資料による。それによると徳島の人工林は63%と全国と比べ非常に高い割合を占めている。

ちなみに「環境を守る最新知識」日本生態系協会編の記述によると国土の70%が森林と記されている。全国森林面積の人工林が41%、天然林が53%ということなので、国土面積全体の37%ぐらいが天然林ということになる。

この割合が多い少ないの判断は、国土における森林機能の多面性に社会的経済的環境的評価を時間軸をふまえて、どう与えるかであって、心象的な4割弱あればまあいいとか、少ないとか、の判断をすべきではない。ただし、自然林は人間の力ではつれないし、自然であることが積極的に人間に害を及ぼさないとすると、天然林が多い分には是とするのが妥当だといえるだろう。

0 件のコメント: